苗字の「斎」とか「齋」の違いとは
斉藤さん、戸籍謄本をよくみると「斉」と「藤」の字が少し違いませんか。「斎」とか「齋」とか。藤の草かんむりがカタカナの「ナ」が2つ並んでいたり、「ト」だったり。他にも渡辺さんの「辺」も「邊」や「邉」など色々あります。昔の漢字を誤って使っているからでしょうか。
現在は電算化された戸籍事項証明書となっていて、ほぼパソコンと同じ文字で作製されていますが、相続などで昔の戸籍をとってみると、手書きの戸籍謄本が発行されることがよくあります。時には虫メガネで拡大しないとわからないような漢字が使われていることもあります。誤記でしょうか。
学生時代に何かの書類を書くときに、「戸籍に書かれている字で氏名を書いて」といわれたことがあるかと思います。戸籍に書かれている文字が正しいのです。ではなぜでしょうか。
戸籍の原本は和紙でできていた
明治時代から長い歴史を持つ現在の戸籍ですが、その記載内容の証明書は数多く発行されてきたことでしょう。現在では偽造防止の透かしが入った紙に公印とあわせて印刷された戸籍事項証明書ですが、その歴史は浅いものです。
その前は戸籍の原本は和紙でできていました。これを複写機で写し、朱色の公印を押して戸籍謄本を発行していました。更にその前は青焼きといわれる機械で感熱紙に原本をのせて印刷していました。ではその前は。
戸籍の原本とは、市区町村役場に保管されている戸籍の正本のことです。戸籍の原本は、一般に閲覧や交付ができないため、戸籍の原本の内容を証明するために、戸籍謄本や戸籍抄本という写しを取得することができます。
手書きです。写経のように書き写していたようです。当然達筆の人もいれば、普通の腕前の人もいたことでしょう。多忙な時は省略文字で書き写したかもしれません。そんな中で様々な漢字が生まれたようです。原本自体も戸籍法の改正に伴い改製されてきたので、その際の手書きで異なる字が生まれたこともあるでしょう。
こうして様々な文字が苗字に使われていることになりましたが、この誤字・旧字といわれる多種類の漢字があったことが、戸籍の電算化の障害のひとつになっていました。住民票のように戸籍も電算化するため整理されることになりました。
出生届や婚姻届、転籍届などの際に文字の更生・訂正の申し出をあわせて受けて通常の漢字に変更してきました。ただ、強制的に変更することはできず、届出する人も限りがあるため全ての文字が解消するわけにはいきませんでした。
ところで名前にはこのような問題がありません。昔はひらがなだったり数字が使われることが多かったからでしょう。現在、名前にはひらがな・カタカナ・常用漢字・人名漢字のうち「常用平易な文字」に限ると戸籍法に定められています。かつて「悪魔ちゃん」騒動があり訴訟になったこともありましたが、苗字のような混乱はありませんでした。
ところが名前にも「キラキラネーム」問題が発生しました。戸籍に記載された漢字の読み方は自由で、出生届にフリガナは記載するのですが戸籍には記載されないのです。
車の名称やキャラクターの名前など、漢字からは想定できない読み方が増え、現在ではキラキラネームと称されるほど困難な名前が増えてきました。この現状から国は戸籍法改正を検討し、読み方を登録する改正案をまとめているようです。国際結婚も一般化している現在、氏名の問題も色々生じていきそうです。


戸籍に関するご相談は「行政書士ひらいあきら」までお寄せください。
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